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マゾでもいいじゃないか 1km/hくらいでのんびり 恒星塵 紫と愛と飯 ヽ( ・∀・)ノ みおまお&れお成長日記! ふがふがふが~? めろーいえろおおおおおおお 碧、はじめます 人生そんなもんです 綺麗なお姉さんが好きですが? こんにちはブリタニア エキサイト以外のブログ
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この話は、2年前のちょうど今頃、 自サイトの掲示板で書いていた話をまとめたものです。 多少加筆もありますが、ほぼ当時のままです。 新しいネタを書き終わるまで、今回はこれでご容赦を。 現在、仕事が非常に忙しく、 ゆっくりネットを楽しむ余裕がありません。 そう。2年前のあの頃も同じだった・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 工事現場の猫。 俺の担当する得意先に、とある工事現場がある。 なかなか売れる場所で、週に2度は行かねばならない。 ある日、いつも通り自販機に商品を補充していると、 1匹の痩せた猫が近づいてきた。 ニャーニャーと鳴きながら甘えてくる。 喉の乾きを訴えているのだとすぐに気付いた俺は、 適当な容器を見つけて水を汲んでやった。 案の定おいしそうに飲み干し、 再びニャーニャーと何かを求めるように鳴き続ける。 残念ながら、その時の俺は猫が食べそうな物は持ち合わせておらず、 今度来るときにはコンビニに寄って何か買ってこよう。 そう思いながらその場を後にした。 その後しばらく、その猫に会えなかった。 心配ではあったが、仕事以外の事に神経を割く余裕もなく、 いつしか猫の事も忘れ始めていた。 しかしある日、工事現場のおじさんが、 腕に何かを抱いているのが見えた。あの猫だった。 俺がいつも通り挨拶をすると、 おじさんは少し照れながら猫を地面に降ろしてやった。 猫はあの時と同じ鳴き声で俺の方に歩み寄ってくる。 少しふっくらとして、以前より元気そうだった。 ふと見ると、プレハブ小屋の軒下に、 誰が置いたのか分からないが弁当の残りがあった。 どう考えても猫が食べそうもない物も混じっていたが、 おじさん達の意外な優しさを目にし、 仕事で疲れきった心がほんの少し癒されるのを感じた。 ある日、猫に異変が起きた。顔が真っ赤だったのだ。 慌てて近寄って見てみると、 なんとピンク色のカラーペンでアイシャドーが描かれていた。 おじさん達のいたずらだろう。 まぁ、可愛がられているということか。 当の本人は素知らぬ顔で、 相変わらずニャーニャーと鳴くのだった。 落書きされた猫の顔も、やがて元に戻ろうとしていた。 そんなある日、再び異変が起きた。 今度は黒い油性マジックで、立派な眉毛が描かれていたのだ。 かなり気合いが入った作品で、 逆三角形が倒れたような、ちょっと怒ったような眉毛に仕上がっていた。 やっぱり本人は自分の顔に起こった異変には無関心で、 いつもと同じ声でニャーニャーと鳴きながら歩く。 その姿がなんだか誇らしげに見えた。 俺はその猫に「オレンジ」という名前をつけた。 全身、赤茶色の典型的な雑種。 その目までオレンジ色なのが印象的だった。 とても人なつっこい猫で、 エサをくれる人、くれない人、関係なしに誰にでも甘えた。 相変わらずプレハブ小屋の軒下には、 誰かしらがエサを置いているようだった。 俺もこの工事現場に来る日はコンビニに寄り、 ツナ缶を買ってから来るのが習慣になった。 すっかりなついてしまった猫は、 仕事中、開け放している俺の車に入り込むことがあった。 興味深げに車内を歩き回ると、 山積みになっている段ボールの一番高い所が気に入ったらしく、 座り込んでそこから俺の仕事を見下ろしていた。 その姿があまりに可愛くて、このまま拉致しようかとも思ったが、 現場のおじさん達にも可愛がられているこの猫。 突然いなくなると心配されるだろう。 この工事現場も年内いっぱいで終わる予定なので、 その後の猫のことを考えると心配になった。 誰もいなくなったこの場所でエサを待ち続けていたら可哀相だ。 現場監督に事情を話して猫を連れて帰ろう。 監督は話の分かる良い人なので大丈夫だろう。 9月も半ばが過ぎ、 自販機業界でも棚卸し作業が始まった。 数百台ある自販機の中の商品を1本1本数える、 それこそ気が狂うような作業だ。 得意先1件に要する時間も増え、 俺がその工事現場に来る時間も遅くなってきた。 俺からのエサを諦めて寝床に帰ってしまうのか、 あの猫には会えない日が多くなった。 誰もいない真っ暗な工事現場の自販機に缶コーヒーをぶち込みながら、 本格的に寒くなる前に猫を連れて帰ろう。そう思うのだった。 9月の末。 久しぶりに会った猫は、足を引きづっていた。 驚いて抱き上げてみたが外傷はないようだ。 病気か・・・栄養失調か・・・ 缶詰を開けてやると貪るように食べた。 迷っている時間はないかもしれない。 しかし、 棚卸し作業の終盤でもあり、 俺の仕事にまったく余裕はなかった。 今日もこの後に行かねばならない得意先が何件もある。 会社に戻っても翌日の商品積み込みや、事務処理が残っている。 ニャーニャーと鳴く声に元気はあった。 もう少しだから・・・ それまで頑張って・・・ とても辛かったが、 猫がエサを食べている隙に俺は逃げるようにその場を後にした。 運転席から振り返ると、 猫は自販機の前で座って俺を見送っていた。 そして、 その猫と会うのはそれが最後になった。 10月に入った。 棚卸し作業も無事に終わり、俺の仕事にも徐々に余裕が戻ってきた。 いつでも猫を連れて帰れるように、 車の中には小さなカゴも積んである。 しかし、あの猫に会えなかった。 そうして2週間が過ぎたある日、 工事現場のおじさんと話す機会があった。 俺は思い切って聞いてみた。 「いつもの猫、最近見ませんね。」 「あぁ、兄ちゃん知らなかったのか。あの猫な、死んだんだよ。」 「えっ・・・・」 交通事故。 即死ではなかった。 最後の力でこの工事現場の裏まで辿り着き、 そこで息を引き取ったらしい。 「遺体を見つけた連中でな、墓を作って埋めてやったんだよ・・・」 おじさんはそう言うと寂しそうにうつむいた。 突然の事に俺は自分でも驚くほど動揺したが、 平静を装いながらおじさんに頭を下げ、礼を言った。 「あの猫も、皆さんに可愛がられて幸せだったと思います。」 「兄ちゃん連れて帰るって言ってたもんな・・・」 「仕方ないです・・・」 会社までの帰り道、いつもの道をいつもの車で走りながら、 俺はあの猫の事を考えていた。 いつも腹を空かせていた猫。 最初に会った頃は食べ物なんか持っていなくて、 車に積んであったカフェオレをあげたけど飲まなかったっけ。 俺が仕事中に散らかしていた段ボール箱に入って ひとりで遊んでいたこともあった。 あまりにも甘えて足もとにまとわりついてくるもんだから、 よく足を踏んじゃったな・・・ 猫は化けて出るから死んでも同情してはいけない。 そう言う人がよくいる。 それでも涙が止まらなかった。 あの工事現場にはもう俺を待っている猫はいない。 しかし、今でも俺の車にはツナ缶が積んである。 夕暮れの工事現場からの帰り際、運転席から振り返ると、 ニャーニャーと鳴く、あの甘えた声が聞こえてくるような気がするのだ。
by m-ayatsuji
| 2004-10-14 23:53
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